おまけ |
雨も止み、幸村が見事にとってきた魚を食べた四人は、本隊に追いつくために出発することにした。 問題は左近だ。足の状態は相当よくないようだ。 「私がおぶっていきます」 幸村の言葉に、三成があからさまに不愉快な顔をした。といっても、それは僅かに眉間の皺が増えた程度で、友を名乗る兼続でなければわからなかっただろう。 実際、この場で左近をおぶっていけるのは幸村くらいだ。やろうと思えば三成だって兼続だって出来ないことはないのだけれど。 「そうだな、馬には乗れそうか?」 「やってみないとなんとも」 「兼続殿は三成殿を乗せてください。私は左近殿を乗せていきます」 「…あ、あぁ」 三成の機嫌が少しずつ確実に悪くなっている。三成自身は気づいていない自分の感情も、兼続や左近からすればよくわかっていることだ。ああ頼むからこれ以上三成の機嫌を損ねるような言動は控えてくれ、と思っても、そう簡単には望みがかなうわけもない。 「左近殿、顔色が優れませんね…早く戻った方がいい」 「ん、ああ。あまり俺のことは気にしなくていい」 「なにを言います、左近殿が一番大変なのですから、少しくらい頼っていただかなくては!それとも、この真田幸村では左近殿の頼りにはなれませんか」 「あ、あー…いや、信頼している。普通にな」 「よかった」 よくない、とつっこみたかったのは兼続と左近と、そして三成だった。 「堪えろ、三成。あいつは優しいのだ」 「……そうだな。いや、何を言っているんだ兼続」 「…いや、いい。行くぞ」 幸村におぶられて、左近は地獄のような気分を味わう。 そもそも兼続にしたって、大の男同士で馬に乗るのなんて勘弁してほしいのだ。慌てていたので二人のための馬を連れてこなかったことを少々後悔する。 が、何もかも後の祭りだ。これなら慶次が幸村についていって、左近を慶次がおぶっていくなり、いっそ姫抱きにでもしてやればよかったのだ。 ああもういっそ、三成に気づかせてやった方がいいんじゃないか、なんて思いながら。 しかしそれは幸村に対する不義のような気がして、兼続にはどうにも実行する気にはなれなかった。 左近はとりあえず、その場の射るような視線をやり過ごすために普段忘れようと努めていることを思い出す。弓の音。絹のような髪。薄い藤の色と、白のあわせの着物。極限に接近したときに見た、淡い桃色の唇とか。 そして、大きなため息をもらす。 「左近殿?」 「あー気にしなくていいって」 「…お疲れですね。無理もありません。城に戻ったら、いい薬を持っていきます」 「…悪いな」 「いいえ」 そしてそんな二人のやり取りを小耳に挟みつつ、兼続は空を仰いだ。 慶次に任せておけばよかった、いやいや友を思って動いたのは自分自身だ。あまんじて耐えるべきだ。ああしかし、慶次にいってもらえばよかった、と繰り返し繰り返し。 そして慶次に最も似合わない、引き上げるだけとはいえ行軍などをさせていることを思い出し、早く戻ってやらないと、全軍挙げて喧嘩が始まってしまう、と先を急ぐことにした。 他人の色恋に不必要に首を突っ込めば、蹴られてしまうし。 三成は相変わらず後ろで不機嫌そうだ。早く気づけと逆に蹴りでもいれたかったが、そこは耐えた。 |
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というわけで、左近の好きな相手はOPのあの人なんですよ、という話でした(笑) |